今年度は、各種マイクロリアクターを設計、作製し反応リアクターとしてどのような性質を発現するかについて検討した。例えば、反応経路の幅(100〜200μm)、深さ(20〜40μm)反応経路長(50〜500mm)等を詳細に検討した。その結果、合成反応においては、反応経路幅よりも経路の深さの方が反応効率が良いことを明らかにすることが出来た。さらに、反応経路長としては、50〜150mm度の経路長で十分であることが判明し、250〜500mmという反応経路長ではマイクロリアクターの安定性に改良の余地があることが分かった。 有機合成反応としては、特にフッ素系物質の合成反応を検討した結果、Horner-Wadsworth-Emmons反応を利用するフルオロオレフィン類の合成では、生成するオレフィン類のE/Z選択性はフラスコ内での反応と変わらないことが判明した。しかしながら、反応時間は短縮できることが分かった。さらに、トリフルオロメチル化反応では、フラスコ内での反応では5時間という反応時間が必要であるが、マイクロリアクターを用いることにより20秒という短い時間で行うことが出来ることを明らかにするとともに、収率の向上もみられた。また、マイケル付加反応も進行し、立体選択性は発現させるためには分子内に光学活性部位を組み込んでおく必要があることも分かった。マイクロリアクターの特徴として、金属触媒を系中に存在させることにより室温で立体選択的な反応を行うことが可能であることを見いだしたので各種の金属触媒の検討をこれから行っていく予定である。
|