研究概要 |
マクロ環状α-(アルコキシメチル)アクリル酸エステル誘導体は,メタクリル酸のエキソメチレンおよびラクトンの2種類の重合性官能基を有しており,それぞれビニル重合,開環重合が進行し,全く異なったポリマーを与える.従って,マクロ環状α-(アルコキシメチル)アクリル酸エステルの重合による側鎖にクラウンエーテル環を有する新規ポリクラウンエーテルの構築には,官能基選択的にビニルポリマーを得る必要がある.そこで,芳香環,エーテル,アミンなど,様々な官能基を有するマクロ環状α-(アルコキシメチル)アクリル酸エステルのアニオン重合,ラジカル重合,酵素重合を行い,その重合反応性や生成ポリマーの構造について検討した.その結果,アニオンおよびラジカル重合では,ビニル重合が,一方,酵素触媒を用いた場合には,開環重合が官能基特異的に進行することを明らかにした.また,アニオン重合では,重合溶媒や開始剤の種類によりある程度,立体規則性を制御することが可能であった.そこで,25員環のクラウンエーテル型構造を有する新規マクロ環状α-(アルコキシメチル)アクリル酸エステルを合成し,ラジカル重合を行ったところ,ビニルポリマー骨格を有するポリマーを選択的に得ることに成功した.さらに,得られたポリマーのアルカリ金属イオン抽出能を評価したところ,類似の15員環のクラウンエーテルを側鎖に有するポリマーとは大きく異なった,環サイズに対応したRb^+,Cs^+などに対する選択的な取り込み能を示し,ポリクラウンエーテルとしての新規機能を有していることが確認された.
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