研究概要 |
マクロ環状α-(アルコキシメチル)アクリル酸エステル誘導体は,メタクリル酸のエキソメチレンおよびラクトンの2種類の重合性官能基を有しており,ビニル重合あるいは開環重合により,全く異なったポリマーを与える.これまでの検討より,アニオンおよびラジカル重合では,ビニル重合が,一方,酵素触媒を用いた場合には,開環重合が官能基特異的に進行することが明らかになっている.特に前者ではマクロ環が主鎖に対して垂直かつ連続的に固定化されたユニークな構造を有するポリマーを与えるため,新規なナノチューブ状空間の構築が可能になるものと考えられる.そこで,マクロ環上に様々な官能基を導入することによるポリマーのより高度な構造・機能制御を達成するため,新規なマクロ環状α-(アルコキシメチル)アクリル酸エステルとして,16員環のクラウンエーテル型構造を有し,さらに種々のアミド基を導入したモノマーを設計・合成した.そのラジカルを行うことにより,重合反応性や生成ポリマーの構造,機能などについて検討した.その結果,60℃でのラジカル重合ではいずれもビニル重合が選択的に進行し,目的とするポリマーを与えることが明らかになった.なお,現在のところ,生成ポリマーの立体規則性に関する詳細は明らかになっておらず,アミド基が重合の立体制御に及ぼす効果については不明である.一方,得られたポリマーのアルカリ金属イオン抽出能を評価したところ,従来型の側鎖にクラウンエーテルを有するポリマーが一般的に,選択性の低下とより大きな金属イオンに対する強い取り込み能を示すのに対して,カリウムイオンを選択的に取り込むことが明らかとなり,新規ポリクラウンエーテルとしての機能を有していることが明らかとなった.
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