本研究では、長寿命の電荷分離状態を提供するための新しい方法論を構築することを目的とする。これまでに申請者は、立体規則性ポリ(N-プロパルギルアミド)およびポリ(N-プロパルギルカルバメート)が側鎖間で秩序だった分子内水素結合を形成すること、これによって主鎖が自己組織化してらせん構造を形成することを見出している。本年度は、ポリ(N-プロパルギルアミド)の分子モデリングによる考察、各種スペクトルからの考察、希薄溶液物性からの検討、ならびに計算機化学を駆使し、本ポリマーの立体構造を解明した。その結果、ポリマー主鎖は緩やかならせん構造を形成し、n番目の側鎖アミド基はn+2番目の側鎖アミド基と水素結合することを明らかにした。そして偶数番目のアミド基のみを着目すると、水素結合によって形成された鎖がポリマー主鎖をらせん状に取り囲んでいることを明らかにした。同様に、奇数番目のアミド基も、水素結合鎖を形成し、これがポリマー主鎖をらせん状に取り囲んでいることが分かった。すなわち、らせん状の二重らせん側鎖水素結合によって、らせん状の主鎖が取り囲まれているのである。 この際、ポリマー側鎖のアミド基が全て同一方向を向くことにより、非常に大きな双極子モーメントが形成できることがわかった。これは適切な末端修飾化によって実現できるものと思われる。
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