1)ポリピロール・マイクロチューブの自己生成条件の検討 ピロールの電解の際、初期段階に導電性の膜が生成するが、電解時間を長くすると直径数十mm、長さ1^-数十mmの突起物が再現性よく膜に垂直な方向に自己生成する。この現象はp-トルエンスルホン酸ナトリウム以外の有機スルホン酸塩を電解質に用いた場合でも、また作用電極をITOガラスから白金箔に変えた場合でも観察される。この突起物を液体窒素で急速冷凍後切断して、SEMで観察すると、中は空洞でマイクロチューブであり、元素分析とラマンスペクトルの測定結果よりこのマイクロチューブが確かにポリピロールよりなることを明かにした。 2)ポリピロール・マイクロチューブの白熱発光 自己生成ポリピロール・マイクロチューブは、その両端に電流を流すと白熱発光する。この発光によってマイクロチューブの骨格のC/N比は、3.5から発光1分後に7.4に、10分後に14.2に変化する。ラマンスペクトルでは、ポリピロールの分子構造に由来するラマンバンドが消える一方、炭素材料に典型的なラマンバンドが現れる。一方、低温領域で電気抵抗の温度依存性を調べると、ポリピロール・マイクロチューブでは、測定した広い温度範囲でT^<1/3>の温度依存性を示し、発光したマイクロチューブでは、T^<1/20>の温度依存性を示した。 3)ポリピロール・マイクロチューブの黒鉛化 白熱発光中に黒鉛化が進行するかを確認するために、ポリピロール・マイクロチューブをアルゴン雰囲気中2500℃で熱処理した。その結果、処理後のマイクロチューブの元素分析とラマンスペクトルの結果は黒鉛自身のものと一致した。また、黒鉛化したマイクロチューブは黒鉛と同様の温度依存性を示した。
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