結晶とアモルファスの中間の固体相である「液晶ガラス」の形成と構造緩和特性に関して、イオン性官能基を有するコレステロール誘導体及びその錯塩型コンプレックス、さらに、ステロイド基間をエステル結合で繋いだ双頭型化合物を対象に、以下の成果が得られた。 1.フタル酸モノコレステリルエステルと直鎖状モノアミン(Cn-amine、nは炭素数)から成る1:1型錯体ガラスのエンタルピー緩和データを、n=4-18のアミン鎖長に亘って揃え比較検討しえた。解析には伸張指数関数KWW式を適用し、回帰法により緩和時間とその分布を、Arrhenius式から活性化エネルギーを、Angell式からガラスとしての脆性パラメーターをそれぞれ求めた。アミン鎖長が長いと緩和時間が短縮すること、液晶相の分子配列様式の秩序性が低下すると緩和の活性化エネルギーおよび緩和時間分布が大きくなること、但し、その場合においても汎用の非晶高分子ガラスと対比して緩和モードの画一性はなお高く緩和も速いこと、などを明らかにした。 2.メソゲン-スペーサー間結合部の化学構造と液晶ガラス形成能との相関究明に関連して、各種ステロイド双頭型化合物を合成し、特に、フマル酸誘導体が急冷を要することなく容易に液晶ガラス状態をとることを見出した。 3.上記と並行して、液晶ガラスの光学機能材料としての応用展開を視野に入れ、アゾベンジル基等を有するコレステロ-ル誘導体を設計し、液晶相の構造や液晶ガラスの緩和現象を光刺激によって制御する実験を進行させている。
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