研究概要 |
我々は3種類の代表的MITEファミリー(Tourist, Stowaway, Mu)と類似の構造を持ち、イネゲノムで最もコピー数の多いサブファミリー:TabitoII, Stowaway OS-1, Onaga1に加え、当グループが新規に同定したMashuの合計4種類のMITEに対してプライマーを設計し、Transposon-Display (TD)に供試した。TDは、制限酵素で切断したゲノムDNAにアダプターを結合させ、特定のトランスポゾン配列内のプライマーとアダプタープライマーの間で増幅したPCR断片をゲル上で比較解析する実験手法である。 純系のジャポニカ3系統とインディカ4系統について、TaqIで切断したゲノムDNAにアダプターを付加し、それぞれのMITEに対応するプライマーと3種類のアダプタープライマー(任意の3塩基を3'端に持つ)を用いてTDを行った。その結果、得られたバンド数は、同一MITEでは系統間で殆ど差はなかった。4つのMITEはOryza AA-ゲノム種間でも大きな変動がないことから、4種はAA-ゲノム内で極めて安定しており、転移する可能性は極めて低い。一方、MITE間ではバンド数に明瞭な違いが認められた。ジャポニカとインディカゲノム(n)当たりの各MITEのコピー数を算出したところ、TabitoIIとMashuは4100-4500コピーと多く、次いでStowaway OS-1が2600-3000コピー、Onaga1は1700前後といずれも1000コピー以上と推定された。 次いで、多型検出頻度について調査した。ジャポニカ-インデイカ間では、Mashuが全体の7割のバンドで多系を生じ、残りの3つのMITEは5割のバンドが多系であった。Mashuはジャポニカ間およびインディカ間でもそれぞれ17%および50%と高い頻度で多系を創出した。これらの頻度値はAFLPの7倍以上に匹敵する。 ここで用いたMITEは、すでにゲノムに安定して散在する反復因子であるが、変異の蓄積は進んでいない。したがって、効率的に多系を検出することができ、イネゲノムの微細なマッピングを進める上で極めて有効な分子マーカーとして利用できると考えられた。
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