本研究は組織培養による再分化が困難なマメ類を中心に種子に直接遺伝子を導入することにより、再分化過程における培養変異などに影響されることなく、安定して形質転換体を得ることのできる形質転換系の開発を目的とする。本年度はこれまで最も困難とされるダイズ発芽種子を用いた形質転換系について再度、検討すると共に、既に確立しているインゲンの場合と比較した。 本研究では、SAAT法、vacuum infiltration法を用いてアグロバクテリウムを発芽種子に感染させ形質転換体作出を試みた。また、これらの方法での処理条件を決定するためにそれぞれの処理方法について条件検討を行った。これと同時に選抜条件の検討も行った。 本研究における条件:アグロバクテリウムの濃度、共存培養期間を検討した結果、アグロバクテリウムの濃度はOD660=0.3、共存培養期間は3日間が適当であることがわかった。EHA101(plg121)、EHA101(pSPB1129)系統のアグロバクテリウムを用いて遺伝子導入を行い、得られたT_1固体についてPCR、ゲノミックサザンハイブリダイゼーションによる解析を行った。 Δ5、Δ6不飽和化酵素遺伝子の導入 上記条件検討で決定した条件で不飽和化酵素遺伝子Δ6desaturaseの導入を試みた。sonication処理、vacuum処理あわせて125個の種子に処理を行い、6個体から種子を得た。それらの種子から得られたT_1固体については遺伝子解析を行った。その結果、EHA101(pSPB1129)のアグロバクテリウムとsonication処理の組み合わせで遺伝子導入を試みたもののうち1系統1個体のT_1個体でポジティブな結果が得られ、形質転換体と思われる個体を得ることに成功した。
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