研究概要 |
根端組織が水分センサーとして根の伸長成長を制御する可能性を検討するため、根長が35〜45mmのトウモロコシの幼植物の根端にソルビトールを加えて水ポテンシャルを種々に変えた寒天片をつけ(処理)、飽和空気湿度条件で根の伸長速度、寒天片と根組織の水ポテンシャルを測定した。以下は結果の概要である。 1.水ポテンシャルが-0.4MPa,-0.8MPaの寒天片を根端に付けても根の伸長速度の変化は認められなかったが、-1.6MPa,-2.4MPaの寒天片を根端に付けると、根の伸長速度は明らかに小さくなった。しかし、このような伸長速度の減少が認められるのは処理3時間以後であった。 2.-1.6MPa,-2.4MPaの寒天片を根端に付けると、寒天片の水ポテンシャルは処理後1時間以内に急激に高くなり、その後の増加はゆるやかであった。 3.根端に水ポテンシャルの低い寒天片を付けた根の伸長速度の減少は、細胞分裂の抑制ではなく、根の基部側の伸長部位の長さと伸長速度が減少することによって起こることがわかった。 4.根端に水ポテンシャルの低い寒天片を付けた根では、処理4時間後には伸長部位の組織の水ポテンシャルが明らかに低下していた。 以上の結果から、根の伸長速度は根端に付けた寒天片の水ポテンシャルによって影響を受けること、そして、この伸長速度の抑制は伸長組織と寒天片との間の水の競合によって起こるのではないことが分った。併せて、根端の組織の水ポテンシャルの低下による伸長部位の細胞の伸長速度の減少は、根端からのシグナルの輸送、あるいは伸長組織の水ポテンシャルの低下による伸長細胞の成長特性の変化が関係していることが推察された。
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