研究概要 |
既にクローニングしている塩生植物Atriplex lentiformisの細胞壁SOD-germin遺伝子(AB024338)を,タバコ,アラビドプシス等にAgrobacterium系ベクターを用いて遺伝子導入し,その再生植物体を得て成育させ種子を収穫した。その発芽植物体でのSOD-germinの過剰発現を確認し、種々実験に供した。また、この遺伝子を大腸菌によりヒスチジン-タグ法によりタンパクを発現させ精製しウサギから抗体を作製し、環境ストレスとSDS-germin様タンパク質の発現と蓄積の関連を調べた。遺伝子導入したタバコ植物体はその形態や成長のスピードなど非形質転換体とほどんど差がなかった。またタバコ赤星病菌に対する対応を調べたが、非形質転換体と比較しても同じように感染し、病斑にも大きな違いが無く、赤星病への耐性への効果はみられなかった。しかし、葉からプロトプラストの調製をしたところ、形質転換体では、プロトプラスト化を抑制し、細胞壁の補強が行われていることが認められ細胞壁SODによるものと推測された。また、A. lentiformis植物体での発現を調べたところ、カルス、根で高く、茎、葉での発現は認められなかった。しかし、メチルジャスモン酸を処理すること、また傷を付けることで、葉でもmRNAの発現が誘導されるようになり、その発現はABA処理でうち消された。ジャスモン酸の関与する環境ストレス対応に関係していることが示唆された。特に障害に対する応答に関与して細胞壁の構造変化に関与していることがうかがわれる。 さらに、遺伝子導入タバコ、アラビドプシスの種子を用いて、germin様タンパク質自身と重金属の相互作用についても調べ,germin-SODの重金属耐性と集積機構を検討しつつある。これらのことより,SOD-germin様タンパク質の耐病性,重金属耐性との関連性を明らかにし,不明であったgerminの機能を解明するとともに,将来の,耐病性付与,汚染土壌修復のための集積能などの環境ストレス耐性を持った植物の育成の可能性を探りたい.
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