研究概要 |
塩生植物Atriplex lentiformisの細胞壁SODgermin-like protein (AIGLP : ABO24338)のカルスにおける局在性を免疫電顕法により調査したところ,このタンパク質は細胞壁の表面の粘液状の物体上に存在することが認められた。植物体での存在も調査したがバックグラウンドが高く,どこに局在するかについては判断できなかったTissue print immunoblot法を用いて植物体レベルの局在性を調査した結果,このタンパク質は少なくとも根の表面に存在することが示された。野外では,根の表面は微生物の攻撃にさらされており,また,伸長時に土壌粒子との摩擦が発生するが,そのため根表面の細胞壁の補強を行うため過酸化水素発生に関わるAIGLPを放出するのではないかと推察された。 このタンパク質が属するgerminファミリーのタンパク質には,強いプロテアーゼ耐性能を持つタンパク質が報告されているが,このAIGLPもペプシンやプロテイナーゼKに対して非常に強い耐性を持つことがわかった。土壌中の微生物が放出するプロテアーゼの存在下でも長期間安定的に酵素特性を維持できることができると考えられた。 どの様な条件下でAIGLPの発現が誘導されるか検討し,葉においてAIGLPのmRNA発現はmethyl jasraonate処理や傷害ストレスにより上昇し,ABA処理により抑制された。一般的にABAは傷害ストレスにおけるシグナル伝達物質であると考えられている。そのためAIGLPはABAにより発現の抑制が起こる珍しいタイプの傷害誘導遺伝子であることが示され,今後,AIGLPと環境ストレス耐性への発展的な研究が可能であることが認められた。
|