イネの穂培養システムの組み立てと運転、異なる品種の培養液濃度反応の基礎的データを得た。大学の改修工事のため当初の環境制御装置が使用できず、実験開始が遅れたことから幼穂形成に関しては実験が行えず、本年は、登熟期における日本の穂数型品種、IRRIの偏穂重型(New Plant Type)品種を用いて、登熟盛期の培地糖濃度と子実成長量との関係、吸収された糖の乾物への変換効率の推定を行った。その結果、全ての品種で培地の糖濃度の増加と共に子実の乾物重が増加し、糖濃度4〜6%で最高値となった。すなわち品種間で最適糖濃度には違いが認められなかった。また、日本型品種では培養による子実の乾物増加は圃場とほぼ同じかやや上回ったにもかかわらず、偏穂重品種では圃場よりも培養の方が大きく子実の乾物増加が大きかった。また、吸収された糖の量と乾物増加量から吸収された糖の子実乾物への転換効率を、穂全体と籾に分けて見た。その結果、全ての品種で穂への転換効率、籾への転換効率共に0.7前後とほとんど違いが無かった。すなわち、いったん穂に入った同化産物の利用は、特に低いことがなかった。これらの結果から、偏穂重品種の登熟がきわめて低いのは、穂に対する同化産物の供給が不足していることが明らかとなった。また、子実の形態観察のためにビブラトームを使用し、切断条件の設定や操作法など技術的問題を解決しつつある。今後、登熟期以前の穂形成に対する培地成分と濃度、培養条件について現在実験の準備を進めつつある。
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