日本の普及水稲品種、日印交雑多収品種、インド型多収品種、New plant type(NPT)品種を水田栽培した。まず日本の普及品種について穂孕み期に穂を切除し、穂を25℃、培地を5℃の元で、異なるショ糖濃度あるいは硝酸態濃度の培地で約10日間暗黒下で培養し、穂の伸張、頴花退化への影響を見た。その結果、高いショ糖濃度は穂の伸張速度を促進すること、ただし、頴花の退化は高濃度の糖によってむしろ促進された。また、硝酸態窒素の効果は明確でなかった。したがって、本液体培養法では穂の成長は糖供給によって影響されるものの、頴花の退化は高い浸透ポテンシャルによって阻害されたと考えられた。そのため、頴花形成への穂培養法の適用にはさらに検討が必要と見なされた。次に、日本の品種、インド型多収品種、NPT品種の登熟期の穂を培養したところ、全ての品種が近似した最適培地糖濃度を示し、そこでNPT品種のみが圃場における同期間中の穂よりもかなり高い頴花乾物増加量を示した。さらに、穂の糖吸収量と穂の乾物増加量との関係から、吸収された糖がどれだけの穂乾物増加となるかを推定すると、全ての品種で約70%となり違いがなかった。したがって、NPT品種の穂は圃場では糖供給の不足状態にあり、このことが低い登熟をもたらしていると考えられた。また、本液体培養システムを用いて、研究経費で購入した超音波水位計により測定した液量の変化から頴花増加の日変化を推定したところ、連続照明下でも、光周期を与えた場合でも、液の吸収速度には日変化が見られた。液の吸収速度は昼間に当る時間に高いことから、子実の日周期、あるいは照明下での低湿度が子実の日変化をもたらしていると考えられたもののさらに条件の調節の下での確認が必要である。
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