研究概要 |
1.スイートコーン栽培への利用 スイートコーン栽培時に約2cm粉砕したナシ剪定枝炭化材を厚さ1cmで土壌被覆し,慣行のプラスチックフィルムマルチおよび裸地と,生育,収量,環境条件等を比較した. 収量に差はなかったものの,生育は慣行マルチで最も優れ,次いで炭マルチであった.炭マルチでは栽培期間を通じて慣行マルチより地温が低く推移し,当初予想した地温上昇効果は認められなかった.炭の粒径や敷設量の検討が必要である.しかし地下5cmと10cmの地温差は小さく,地下部環境の安定には寄与したと考えられた.また,裸地,慣行マルチで地温が40℃〜45℃に達した強日射時において,炭マルチでは30℃前後であり,夏季の利用が有効となる可能性が考えられた.栽培中の土壌ECは慣行マルチで高く,炭マルチでは低かった.しかし交換性カリウムは炭マルチで高かった.肥培管理を再検討する必要があると思われた.雑草発生量について,炭マルチにより広葉雑草の発生量は抑制されたものの,本試験で用いた粒径,敷設量では細葉雑草を抑制することかできなかった. 2.土壌理化学性への影響 炭の粒径を3水準設け,赤土との混合比較率(赤土:炭=100:0,95:5,90:10,85:15)を変えることで10種類の培養土を作成し,物理化学性を調査した. 培養土のECは炭の粒径が小さいほど高く,交換性カリウム濃度が高かった.交換性カルシウム,マグネシウム濃度も若干増加する傾向があった.逆にCECは炭の粒径が大きいほど大きかった.炭と赤土の混合比率と,土壌の物理化学性との間には,一定の傾向が認められなかった.そこで炭のみを用いて水抽出性無機成分を測定したところ,粒径が小さいほどリン酸、カリウムの濃度が高かった.よって,粒径が小さいほど,炭の含有成分が土壌水に溶解しやすくなったと考えられ,前述の結果と一致した.これらから,CEC増加など,土壌改良材としての効果を期待する場合には粒径の大きい炭を,肥料としての効果を期待する場合には粒径の小さい炭を利用することで,剪定枝炭化材を有効利用できる可能性が示唆された.
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