研究概要 |
バラ科は,多くの園芸作物が属する園芸学上きわめて重要な科である.バラ科内の変異は大きく,科内がさらにサクラ亜科,ナシ亜科,バラ亜科,シモツケ亜科の4亜科に分類されている.これらの4亜科のうち,バラ科に属する果樹類の多くはサクラ亜科とナシ亜科に属し,前者にはオウトウ類やモモ,スモモなどの核果類が,また後者にはリンゴナシあるいはマルメロやカリンなどの仁果類が属している.これらの果樹の花序形態や結果習性は多様性に富んでおり,サクラ亜科の果樹類は純正花芽を形成し,ナシ亜科の果樹では混合花芽が形成される.本研究の目的は,これらバラ科果樹の花芽形成と花序形成の分子機構を解明することにあるが,本年度はバラ科ナシ亜科に研究対象を絞って,以下の研究を行った. 1)花芽分化様相の観察 実体顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて,バラ科ナシ亜科の果樹5種(リンゴ,ニホンナシ,セイヨウナシ,マルメロ,カリン)の花芽分化の様相を観察した. 2)TFL1,LFY遺伝子のホモログの単離 バラ科ナシ亜科の果樹6種(リンゴ,ニホンナシ,セイヨウナシ,マルメロ,カリン,ビワ)の花芽形成に関与すると考えられる遺伝子であるTFL1,LFY遺伝子のホモログのクローニングを行った.アラビドプシスやキンギョソウで報告されている配列を参考にゲノムDNAのPCRやRT-PCR, RACEにより,TFL1とLFYの全長配列を明らかにし,比較を行った. 3)リアルタイムPCR法によるTFL1とLFY遺伝子の発現調査 リアルタイムPCR法によって,バラ科ナシ亜科の果樹5種(リンゴ,ニホンナシ,セイヨウナシ,マルメロ,カリン)のTFL1とLFY遺伝子の発現量を経時的に調査し,実験1で観察した花芽分化様相と各遺伝子の発現量を関連づけた.
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