チャノコカクモンハマキ核多角体病ウイルス(AdhoNPV)を95%致死量の1000倍という高濃度接種をした場合、ウイルス包埋体がほとんど産生されずに、宿主は3〜6日の短期間で致死する。われわれはこの現象を「ショック死」と名付け、定義づけするためにさまざまなウイルス-宿主の組み合わせでバイオアッセイを行い、ショック死の有無を判定した。その結果、チャノコカクモンハマキでは少量のウイルス増殖を伴ってショック死が起こったのに対し、AdhoNPVに対して非感受性であるチャハマキ孵化幼虫では、ウイルスの増殖を伴わずにショック死が起こった。また、チャノコカクモンハマキ顆粒病ウイルスおよびAutugrapha californica核多角体病ウイルスを供試して同様の実験を行ったところ、ショック死する個体が出現したが、AdhoNPV接種の場合と比べてショック死率は低かった。このことから、この現象は宿主のウイルスに対する感受性に関係なく起こるということが示唆された。 一方、得られたショック死虫からDNAを抽出し、PCR診断に供試したところ、ショック死虫にはウイルスの存在を示すシグナルが確認された。また、ショック死虫の組織レベルでの形態的観察結果から、中腸が縮小し、摂食阻害が起こっていることが明らかとなった。このことからショック死は、ウイルスの侵入によって中腸に障害が起こることで誘導されるという可能性が示された。
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