研究概要 |
1.カイコゲノムからのレトロウイルス様因子の発見 gypsyやTEDなどの昆虫レトロウイルスのORF3をqueryにしてESTデータベースおよびゲノム塩基配列を相同性検索した結果,Lyra, Aquila, Cygnusの3種のレトロウイルス様因子を発見した。染色体上ではいずれも両端のLTRにはさまれた三つのほぼ完全なORFを有していた。3種類ともカイコ個体でRNAとして転写されており,完全長RNA以外にENVをコードするサブゲノミックRNAが生成していた。培養細胞BmNにおいて,Aquilaは100倍以上にコピーが増えていることが判明した。これらがカイコのレトロウイルスであるなら,遺伝子導入ベクターとして有望である。 2.カイコゲノムからのpiggyBac様配列の発見 カイコESTデータベース上には多くのClassII型転移因子様配列が認められる。そのなかに,イラクサキンウワバのトランスポゾンpiggyBacに相同性を有する配列を発見した。piggyBacはカイコの遺伝子導入ベクターであり,ゲノムに内在性piggyBacが存在することは,実験手法上大きな問題になる。 3.カイコの染色体ゲノム塩基配列を対象にした高頻度反復配列のサーベイランスカイコ p50系統の全ゲノムショットガン配列9600個をPFPフィルターに通し,ベクターの配列や既知のカイコ反復配列と100bp以上一致する配列などをマスクした。その過程で,mariner様配列が848リード,BMC1が481リードなどと,多数の反復配列が検出された。残った8557リードをCAP4でアセンブルした結果,6469リードのシングレットと843のコンティグ(=2088リード)にまとめられた。これらの配列には,まだBMC1が201リード,Bm1が808リードなどと,反復配列が認められたが,いずれも数十から数百bpの短い配列であった。
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