乳酸菌の一種であるStreptococcus mutansから、新たに過酸化物耐性因子dpr (Dps like peroxide resistance gene)遺伝子を見出した。Dpr分子がどのようにS.mutansに酸素耐性を付与しているか明らかとするため、dpr遺伝子産物の取得と解析を行った。好気的に培養したS.mutansの菌体約10gから、ハイドロキシアパタイトを用いたバッチ法と3種のカラムクロマトグラフィーを用いて、精製度で約50倍、精製標品として約2.4mgのDpr蛋白質を得た。Dpr分子は、SDS-PAGEで20kDa、沈降平衡法で223kDa、動的光散乱法で292kDaの分子量を示したことから、約12量体からなる複合体を形成していると考えられた。また、このDprの複合体は直径約9.2nmの球状の粒子として顕微鏡で観察され、鉄結合蛋白質であるフェリチン(直径12.5nm)と類似した形状であった。ICP-MASSを用いて、金属元素種の同定と定量を行った結果、精製したDpr分子には複合体当たり鉄と亜鉛がそれぞれ27.8、10.5個含まれていた。Dpr精製標品の鉄および亜鉛との結合能について調べた結果、その最大積載量は鉄が複合体当たり480個、亜鉛が11.4個であった。また、Dprは球状のフェリチン様の12量体を形成する分子であった。
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