研究概要 |
大腸菌形質転換体に(単一炭素源としての)D-アミノ酸資化能が新たに付与する大腸菌染色体DNA由来5.3-kbの遺伝子領域の塩基配列を決定し、(既に公開されている)大腸菌の全ゲノムの塩基配列のデータベース上で検索を行った所、本5.3-kb断片には5つの機能未知遺伝子が存在することが判明した。これらの遺伝子は、(D-アミノ酸ラセマーゼ,D-アミノ酸トランスアミナーゼ,D-アミノ酸オキシダーゼを含む)既知のD-アミノ酸代謝酵素遺伝子とは全く相同性を示さないことから、新規な酵素が上記のD-アミノ酸代謝に関わっていることが示唆された。 続いて、本5.3-kbの遺伝子領域を様々な長さに削ったDNA断片を調製し、各プラスミドを(別の)大腸菌JM109に導入することによって得られた各形質転換体を、D-シスチンを単一炭素源とする完全合成(液体)培地を含む試験管中で培養を行い、各々のD-シスチン資化能を測定した。その結果、大腸菌ゲノムデータベース上でO341#16と登録されている遺伝子が本資化能に関与していることが判明した。O341#16の遺伝子は1080塩基から構成され、それに由来するタンパク質は360個のアミノ酸から構成されると推定された。そこで、データベース上で、本遺伝子の予想開始コドンを基にデザインした合成オリゴヌクレオチド(と、終止コドン下流の塩基配列を基にデザインした合成オリゴヌクレオチド)を用いてPCR法によって増幅した遺伝子断片を大腸菌JM109に導入し、本遺伝子産物の発現をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で検討した結果、発現量は全可溶性タンパク質の3%以下であった。発現産物をPVDF膜にブロッティング後、そのN末端部分アミノ酸配列をプロテインシークエンサーで解析した結果、予想される開始コドン近辺のアミノ酸配列は認められず、それより32アミノ酸下流のメチオニンがN末端アミノ酸として同定された。
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