研究概要 |
昨年度までに、(D-アミノ酸ラセマーゼ,D-アミノ酸トランスアミナーゼ,D-アミノ酸オキシダーゼを含む)既知のD-アミノ酸代謝酵素遺伝子とは全く相同性を示さない、新規な酵素がD-アミノ酸代謝に関わっていること明らかにした。大腸菌ゲノムデータベース上でo341#16と登録されている遺伝子が本資化能に関与しているが、予想される開始コドンより32アミノ酸下流のメチオニンがN末端アミノ酸であると同定した。 そこで、本メチオニンに対応するコドンを基に新たにデザインした合成オリゴヌクレオチド(と、終止コドン下流の塩基配列を基にデザインした合成オリゴヌクレオチド)を用いてPCR法によって増幅した遺伝子の大腸菌JM109での発現をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で検討した結果、全可溶住タンパク質の40%もの著量発現が認められた。本発現産物を用いて、D-シスチン分解酵素活性を測定した結果、顕著な活性を示すことが明らかとなった。また、分解産物として、ピルビン酸、アンモニア、硫化水素を同定することに成功し、本発現産物はD-シスチンデスルフヒドラーゼであることが判明した。 続いて、本酵素をDEAE-Sephacel、Mono-Qカラムクロマトグラフィーに供することによって、電気泳動的に単一に単離精製することに成功した。本酵素の分子量は72,000であり、分子量35,000のサブユニット2個から構成されることが明らかとなった。本酵素のD-シスチンに対するKm値は1.07mMであり、Vmaxは9.32μmol/min/mgであることが判明した。また、本酵素はD-システインにも作用し、そのKm値は0.87mMであり、Vmaxは4.51μmol/min/mgであった。さらに、本酵素は逆反応をも行うことが判明した。
|