カルモジュリンは、真核生物では種々のタンパク質の構造変化を起こさせることでその活性を調節し、細胞骨格、環状ヌクレオチド代謝酵素などの細胞機能を制御する。本研究は、我々がグラム陽性細菌である放線菌に見出したカルモジュリン様タンパク質(CabB)に端を発している。今年度の成果は以下のようにまとめられる。 (1)CabBは、Caイオンを結合するとその二次構造が大きく変化することをCDスペクトルにより確認。 (2)CabBを固定したアフィニティーカラムに放線菌の抽出液を通したところ、明らかに2種のタンパク質がCabBと相互作用することが示された。 (3)CabBと相互作用すると考えられたタンパク質の1種を精製し、そのN末端アミノ酸を決定したところ、翻訳伸長因子EF-Tuであった。改めてEF-Tu遺伝子を大腸菌にクローニングし、発現したタンパクを用いた結合実験でもCabBとの結合が確認された。なお、高等動物でもカルモジュリンはEFと結合し、EFが有する翻訳機能以外のアクチン繊維、チューブリン繊維の重合度を調節する。 以上のように、CabBは原核生物界で初めてのカルモジュリンであると確認された。これまでの成果を論文にまとめるための準備中であるが、本成果は生物界に大きなインパクトを与えるものと考えている。来年度は、CabBとEF-Tuの複合体が影響を及ぼすであろうと考えているFtsZ(チュープリン様タンパク質で細胞分裂装置の重要な構成成分の1つ)との関連を追及し、「CabBは真にカルモジュリン」であることを確定する予定である。
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