カルモジュリンは真核生物全般に存在するタンパク質で、セカンドメッセンジャーであるカルシウムと結合することにより活性型となり、複数のタンパク質と結合することで様々な細胞過程を制御することが知られている。カルモジュリンは真核生物特有のタンパク質で、現在まで原核生物にカルモジュリンが存在するという報告はない。我々はコンピュータ検索により放線菌にカルモジュリンホモログが存在することを見出し、そのタンパク質をコードする遺伝子をcabBと命名し、放線菌では遺伝解析が最も進んでいるS.coelicolor A3(2)を用いて機能解析を行ってきた。 CabBがカルモジュリン同様、カルシウム結合能を有し、カルシウムとの結合によりタンパク質の大きな構造変化が起こることを明らかにした。また、CabBアフィニティーカラムを用いてCabB結合タンパク質として、ペプチド鎖伸長因子として知られるEF-Tuを同定した。ペプチド鎖伸長因子は全生物の間で最も高く保存されているタンパク質であり、真核生物においてEF-TuにあたるものはEF-1αである。EF-1αは伸長因子としての機能以外にチューブリンの重合を安定化するシャペロン様因子としても知られる。EF-1αはカルモジュリン結合タンパク質であることが知られており、この結合によりEF-1αの細胞骨格安定化機能は阻害される。我々は原核生物である放線菌にもこのような機能が保存されていると予想し、原核生物のチューブリンホモログFtsZの重合へのEF-Tu、CabBの影響を調べている。現在までのところ、申請者らはEF-TuがFtsZに結合し、FtsZポリマーを束ねる機能を持つことを明らかにした。 EF-Tuにより束ねられたFtsZポリマーがCabBによりどのような影響を受けるかを調べると共に新たなCabB結合タンパク質の同定を行うことが、今後の計画である。
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