研究概要 |
GPIアンカーはヒトTリンパ球マーカーなどのタンパク質や狂牛病との関連で注目されるプリオンと結合する一群の糖脂質分子であり、細胞膜シグナル伝達ドメインに集積して機能していると考えられているが、その詳細なメカニズムは不明である。本研究はGPIアンカーの特異な構造と機能に着目し、その機能を効率的にミミックする分子の創製を目的とする。昨年度はGPIアンカーとタンパク質との化学的結合形成法を開拓する目的で、モデル化合物としてマンノビオースホスホエタノールアミンと、固相合成で得られるアミノ酸数12残基からなるペプチドチオエステルを銀塩で活性化して縮合した。この反応ではペプチドC-末端でのアミノ酸のラセミ化が観測され、C-末端にグリシンを付加した13アミノ酸からなるペプチドチオエステルをとの反応では異性体の生成は無いことを明らかにした。本年度は側鎖メルカプト基をt-BuSで保護したFmocシステイン残基をマンノビオースホスホエタノールアミンに予め導入し、脱Fmoc後、上記トリデカペプチドチオエステルとNative chemical ligation条件での縮合を行い良好な收率で縮合物を得た。上記マンノビオースの脂質への結合を図るため、GPIアンカーに含まれる他の3糖鎖部分(Man-GlcN-Inositol)を簡略化し、テトラエチレングリコールでミミックした化合物の合成を行った。市販のテトラエチレングリコールをモノトリチル化、O-アリル化、脱トリチル化を経てアリル保護のテトラエチレングリコール誘導体を合成した。一方、6-O-tBDPS-3,4-di-O-Bn保護したマンノース1,2-オルトエステルを調製し、アリル化テトラエチレングリコールとTMSOTf触媒で反応したところ41%の收率でグリコシド体を得ることが出来た。脱アリル化の後、リン酸化脂質との結合を行う予定である。
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