研究概要 |
(1)移動走査方式による林冠構造把握を実現するための機器の開発,(2)林冠構造-放射環境-熱収支特性関係の二次林における実態把握,(3)3次元林冠構造データの活用法の検討の,以上の3つについて研究を進めた。 (1)は試作品およびデータ収集用プログラムを製作した。実験室内で稼動試験を実施した。(2)は豊田市内の里山林において顕熱フラックスを乱流変動法で測定し,林冠表面温度を放射温度計で測定し,顕熱のバルク輸送係数CHを求めた。CHと主風向方位の関係は風向の地形依存性を反映するとともに,季節変動を呈し,森林構造の幾何学的な季節変化の顕熱フラックスの動態への影響を示唆する結果となった。 (3)では2つの有効な活用法を提示した。ひとつはレーザをアクティブに林冠に照射し森林の3次元構造と同化部・非同化部の判別を同時に測定する際に,従来は正規化植生指標のような放射輝度間の演算で対応していたが,本測定のような近距離隔測定においてはレーザ輝度を距離の3/2乗で補正することが有効であることが判った。二つめは3次元林冠構造データを用いたLAI間接測定法の補正で,従来は全天空画像を用いLAIを算出する際に水平な均質な厚さの林冠を前提としていたが,3次元林冠構造データを用いて全天空画像上の林冠厚さを計算に織り込むことにより,その前提条件の成り立たない森林での使用が可能となった。 以上の(2)(3)の周辺技術の検討により数百メートルオーダの林冠構造の把握の重要性が高まった。これは(1)で開発中の移動走査方式で把握可能であり,次年度の研究進展が期待される。
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