研究概要 |
植物の燻煙成分を効率よく捕集するための装置を考案した。ガラス器具を主体としたもので、フラスコにウグリュークライゼンを取り付け、さらに冷却器、気体生成物採取口、液体凝縮物用受器をシステム化した。フラスコをバーナーで加熱し、フラスコ内の雰囲気温度を〜400℃までとし、冷却部を水冷にして受器をつけ、その後方にさらに特殊な形に考案したドライアイス捕集装置をつけ、二重トラップとした。受器と加熱部の間に気体採りだし口を設け、ガスタイトシリンジあるいはTENAXトラップの装填により気体試料の採取を可能とした。 茶葉および茶葉の水抽出残さを用い、熱分解を行った。この実験では加湿空気を吹き込むことによって揮発性成分の放出量を高めるアクアスペース法を利用し、デシケーター内の加熱物質に加湿空気を吹き込んだ。試料はデシケータ内にセットしたバーナーで加熱し、生成する熱分解物を氷水冷却およびさらにエタノール中にバブリングすることによって捕集した。また、茶葉、茶葉の水抽出残さを電気炉(500℃)で炭化し、その際に得られる粗酢液を得た。粗木酢液のpHはいずれも弱アルカリ性で、GC-MS分析の結果、前者からはammonium carbamate, caffeine, pyridine, acetonitrile, phenolを主要成分とする16種、後者からはoctane、pentadecane, hexadecane, 1,4-epoxy-cyclehexane, 2-(benzylamino)-ethanol, 2-methyl-1H-pyrrole, m-cresol, indolなどを主要成分とする30種の化合物を同定した。両者共に比較的多量の窒素化合物を含んでいるのが特徴的であり、酢酸は後者に少量含まれているだけで、主要成分が酢酸である木質系材料の木酢液とは大きな相違があった。なお、熱分解液中に見いだされた窒素化合物は茶葉に含まれるカフェインおよびクロロフィル由来、炭化水素はクロロフィル由来であると推定される。
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