リグニンは細胞間にあっては細胞同士を接着する役割を持ち、細胞壁にあっては力学的な支持機能を受け持つ、と従来から考えられている。しかし、研究代表者は、擬似微少重力化で分化した木質細胞壁は1G下で分化した細胞より小径ではあるが、二次壁の厚みとそこでのリグニン量は変わらない、という結果を得ており、従来の見解とは一致しない。そこで、木質細胞にとってのリグニンの物理的意義を調査するため、生育中の重力環境を変えられる装置として遠心過重力生育装置の創製を本研究は目指している。 本年度の研究成果は以下のようである。 1.遠心過重力育成装置を2機試作した。1つは、汎用遠心機をもとに照明装置とバケットを改良したものであり、もう1つは、より大きな試料の生育ができるように全て特注で作った。回転数を制御することで遠心力を3Gから十数Gまで制御でき、数ヶ月の連続使用が可能であり、木本植物の生育に不可欠の仕様は満たすものができた。 2.現在判明している試作した遠心過重力生育装置で改良すべき点は、遠心による空気抵抗が茎に及ぼす影響を除去すること、照明を茎の真上になるようにし光屈性の影響を減らすこと、である。ただし、第二の改良はスイングバケットに照明装置を組み込むことになり、装置が大きくなってしまい、より大きな生育空間を必要とする。
|