木質細胞にとってのリグニンの物理的意義を調査するため、遠心力によって過重力環境下で苗を生育できる装置の創製が本課題の第一目標である。昨年度までに、遠心過重力生育装置を2機試作した。 本年度は苗の生育条件を良くするための以下のような改良を行った。 1.遠心による風圧や空気抵抗によって幹が力を受けないように、風防のための多いをバケットに取り付けられるようにした。 2.成長への光屈性の影響を避けるため、照明を幹のほぼ真上に球状の照明装置を設置した。照度の向上も行うことができて、光合成に最低限必要な2500ルクスを確保できるようになった。 この改良した装置で実生苗を生育し、細胞壁リグニン量を調べたところ、次のことが明らかになった。1Gから6Gまでの増加に伴い、細胞壁のリグニン量は増加していったが、それ以上の過重力ではリグニンは逆に減少し、50G以上では細胞壁はほとんど木化していないようであった。 新たに判明した遠心過重力装置で木本植物を生育するときの問題点は、鉛直に生育する実生苗が少ないことである。バケットはスイングするため幹と重力方向は一致しているのだが、葉による自重分布が不均一であるため倒れてしまうためであろう。来年度は、遠心過重力装置での挿し木の生育を検討し、肥大成長と重力の関係を調べる手法の確立を目指す。 生育中に倒れてしまったサクラ苗で引張あて材の形成の有無を調べたところ、14Gまではあて材の形成が確認でき、姿勢制御の仕組みが14Gまでは機能し有効であることが分かった。
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