既存の偏光フィルムはその多くが、ポリビニルアルコール(PVA)を素材とし、これにヨウ素や高二色性色素であるコンゴーレッド等を吸着させ、その膜を一軸方向に延伸して色素分子を配向させる方法により調製されている。平成16年度は、上記の調製法を採用し、実際にPVA-コンゴーレッド配向フィルムを調製して、これらと研究代表者独自手法により調製したネマティックオーダーセルロース(NOC)-コンゴーレッド配向フィルムの光学特性を、可視分光光度計を用いて比較、検討することを目的とした。 その結果、以下のことが明らかとなった。偏光フィルムの重要な物性の1つとして、高分子フィルム中の色素の偏光度(%)が挙げられる。そこで、まず、NOC-コンゴーレッド配向フィルムにおける偏光度を検討した。偏光度を算出にあたり、未延伸のセルロース-コンゴーレッドフィルムを用いて、波長400〜800nmの可視光域における最大吸収波長を求めたところ、513nmに吸収があることがわかった。次に、延伸倍率の異なるNOC-コンゴーレッド配向フィルムの可視光透過率を測定し、513nmにおける透過率からそれぞれ偏光度を算出することにより、延伸倍率の増大ともに偏光度も増大するという結果を得た。さらに、異なるコンゴーレッド量を使用した場合の偏光度を比較したところ、セルロース量に対して0.8wt%のコンゴーレッドを加えた場合に、偏光度が70%近くを示し、最も大となった。PVA-コンゴーレッド配向フィルムについては、NOC-コンゴーレッド配向フィルムと同様に一軸2倍延伸を施し、507nmにおける透過率から偏光度を算出した。PVA量に対して0.1wt%のコンゴーレッド量のときに偏光度が最大になったが、その値は約40%に過ぎず、NOC-コンゴーレッド配向フィルムのほうが高い偏光度を示す結果となった。
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