雄が雌に寄生する、チョウチンアンコウ亜目魚類の繁殖生態に関する組織学的研究。

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14656075
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 猿渡 敏郎 東京大学, 海洋研究所, 助手 (00215899)
• キーワード: チョウチンアンコウ亜目 / 中深層性魚類 / 繁殖生態 / 魚類学 / 発光生物 / 組織学的研究

研究概要

硬骨魚類は、地球上のほぼ全ての水域へと適応放散を遂げた、脊椎動物中最も繁栄した分類群である。現在約24,000種の魚類が確認されている。なかでも中深層性魚類のチョウチンアンコウ亜目はひときわ眼を引くユニークな分類群である。現在11科、約160種が知られ、そのうち4科において、雄が雌の体表へと寄生する事が知られている。この雄が雌の体表へと寄生するチョウチンアンコウ亜目魚類の特異な繁殖生態は、古くから知られていた。しかし、雄が寄生した雌の採集報告はあるが、この寄生による繁殖生態に関する詳細な研究は未だ行われていない。本研究では、この脊椎動物中他に例を見ないチョウチンアンコウ亜目魚類の寄生機構の解明を、組織学的手法を用いて行うことを目的とした。
研究の第一段階として、既存の標本の精査を実施した。アメリカ合衆国のワシントン大学水産学部魚類コレクションへと赴き、チョウチンアンコウ亜目研究の第一人者であるTheodore W.Pietsch教授と情報交換を行った。その結果、雄が雌の体表へと寄生する様式には少なくとも二通りあることが判明した。この研究結果は、平成15年度日本水産学会大会(平成15年4月2日、東京水産大学)にて発表した。
第二段階として、海洋研究船白鳳丸KH00-2次航海において採集された、体表に8個体の雄を寄生させていたミツクリエナガチョウチンアンコウの雌個体を材料に、雄と雌の結合部の組織学的観察を行うための作業を行い、現在精査中である。
第三段階として、分子生物学的手法を用いて雌雄間並びに寄生雄同士の同胞鑑定を実施すべく、分子生物学的手法の確立作業を行っている。練習台として、タツノオトシゴ類の系統類関係をミトコンドリア16S r RNAの塩基配列情報より求め、その結果を学術雑誌DNA多型へと投稿し、印刷となった(小林敬典、正岡哲治、塚田修、古田正美、猿渡敏郎2002)。

研究成果

• [文献書誌] T.Saruwatari, I.Oohara, T.Kobayashi: "Salangid Fishes : Their past, present and future"Fisheries Science. 68 Suppl.I. 71-74 (2002)
• [文献書誌] Waters, J., T.Saruwatari, T.Kobayashi, I.Oohara, R.McDowall, G.Wallis: "Phylogenetic placement of Retropinnid fishes : Data set incongruence can be reduced by using asymmetric character state transformation costs"Systematic Biology. 51(3). 432-449 (2002)
• [文献書誌] 小林敬典, 正岡哲治, 塚田修, 古田正美, 猿渡敏郎: "ミトコンドリア16S r RNAの塩基配列分析から見たタツノオトシゴ類の系統関係"DNA多型. 10. 93-96 (2002)
• [文献書誌] 佐々木剛, 猿渡敏郎, 渡邊精一: "岩手県沿岸に生息するイトヨの生活史"水産増殖. 50(1). 117-118 (2002)