1.ハタゴイソギンチャクの3成分のペプチド毒(EGF様ペプチド毒:gigantoxin I、タイプ1のNaチャンネル毒:gigantoxin II、タイプ2のNaチャンネル毒:III)について、3'RACEおよび5'RACEによりcDNAをクローニングし、全塩基配列を決定した。いずれのペプチド毒もその前駆体はシグナルペプチド、プロパート部および成熟ペプチドで構成されていた。また、各ペプチド毒は刺胞に存存することを確認し、プロパート部は刺胞へのsortingに必要な部分であると推定した。 2.gigantoxin Iの遺伝子構造を解析し、シグナルペプチドの中間にイントロンを確認した。なお、哺乳類由来のEGFの前駆体は特有の繰り返し構造を有するが、gigantoxin Iの場合には繰り返し構造はみられず、遺伝子構造は異なることが判明した。 3.25種イソギンチャクの拙出液についてA431細胞の形態に及ぼす効果を検索したところ、数種イソギンチャクに細胞毒性が認められたがEGF様活性はいずれも陰性であった。しかし、イボハタゴイソギンチャク、シマキッカイソギンチャク、センジュイソギンチャクからgigantoxin I同様にサワガニに対して一過性の麻痺を引き起こすペプチド毒を単離し、アミノ酸配列分析から新規ペプチド毒であることを明らかにした。 4.gigantoxin Iは、シナプトソームを用いた競合試験により各種イオンチャンネルやアセチルコリンレセプターに対するブロッカーではないと判断され、さらにアセチルコリンとの結合能およびコリンエステラーゼ活性も示さなかった。また、gigantoxin Iを大腸菌で発現させたが生物活性を確認できなかった。gigantoxin Iの毒性発現機構、構造活性相関は今後の課題として残された。
|