GIS(地理情報システム)が、農業経営管理や自然資源の管理にいかに応用されているか、その応用方法、将来いかなる可能性を秘めているかに関して分析した。GISの応用分野として、(1)個別農家の農地利用分析、特に輪作の経済分析、(2)人工衛星データを活用した農作物の栽培管理、(3)土地被覆図の作成、(4)地域における農地管理、などさまざまな応用分野があげられる。特に、衛生データを活用したGISは、広範な応用可能性をもつことが明らかになった。北海道のM町の畑作農家を事例とした輪作体系の分析では、数十年に及ぶ作付図をGISで、オーバーレイ解析することによって、地片レベルで輪作パターンを明らかにできた。事例農家の分析結果によれば、ビート→馬鈴薯→スイート・コーン→麦なる4作目から、ビート→馬鈴薯→麦の3作物輪作パターンが主流になってきていることが、明らかになった。衛星データの普及は、イネの植生指数から食味を左右する地域全体のコメの蛋白質含有量を一瞬にして推計することを容易にし、北海道N町では良質米の生産に貢献ていた。蛋白マップ作成に対する農家の評価は高く、施肥設計に大きな影響を及ぼしていた。さらに、衛星データの活用は途上国では大きな威力を発揮する。例えば、パキスタンにおける過剰湛水や塩害問題の広がりを広域的に明らかにすることができた。近年、高解像度の衛星データが比較的容易に入手できるようになりつつあり、農業経済学の分野でもこうしたデータを駆使した実証分析が普及するものと考えられる。
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