研究課題/領域番号 |
14656086
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
井上 京 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (30203235)
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研究分担者 |
山本 忠男 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (00312398)
冨士田 裕子 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教授 (50202289)
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キーワード | 泥炭地 / 湿原 / 湿地 / 再生 / ミズゴケ / 地下水位 / ササ |
研究概要 |
札幌市北区に残存する篠路福移湿地において、保全の可能性を客観的に判断するために、湿地の現状把握と復元のための実験を行った。ここでは6つの群落が分布し、乾燥化にともなう遷移進行が示された。湿原特有の植物もみられるヌマガヤ-ミズゴケ群落は、空中写真解析から泥炭をはぎ取った跡地に成立した二次植生であることが判明し、復元の可能性が示唆された。いずれの群落も地下水位は、降雨による水位上昇と降雨後の急激な低下が顕著で、湿地全体の乾燥化の進行が明らかになるとともに、夏季の水位低下時に表層泥炭が好気的条件に周期的にさらされ、泥炭の分解促進と質的変化が生じると考えられた。湿地内に掘削された多数の排水路が、夏季の大きな地下水位低下をきたす原因とみられる。植生復元実験から、地表の分解の進行した泥炭を排除すると、相対的に地下水位が高くなり、ササの駆逐と低層湿原種の出現が期待される。 新篠津村の残存原野では、地下水位低下を防ぎつつ湿原植生を復元させることが検討されているが、まず現状把握のためのフロラと植生調査を行なった。原野は面積2.3haと狭いが、現在のところ157種の植物が確認され、中には絶滅危惧植物も含まれた。ほとんどは植栽されたシラカンバ林でおおわれるが、川跡部分には湿原特有の植物が少ないながらも生育していることが確認された。 サロベツ湿原・原生花園木道付近では、ミズゴケ植生復元実験を行った。調査地は道路側溝による地下水位低下の影響で、高層湿原植生にササが侵入したもので、ササの下層にミズゴケや高層湿原植生特有の種が今だに残存している。14m×14mの試験地を設置し、年1回ササを刈り払い、その中に1m×1mの方形区40ケを設け、10通りの試験を行った。その結果、ササの刈り払いを行った場所にミズゴケを散布することは、ミズゴケの生育面積を増加させるのに十分な効果があり、特にリターを取り除くとその効果が大であることが明らかになった。
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