山地斜面での水文現象には未解明の部分がなお多くあるが、特に表土層での貯留と排水は斜面崩壊や微生物活動等、さまざまな現象と結びついている。斜面表土層の貯留。排水特性は構成土壌の透水係数および斜面勾配に応じて決まり、表土層水分の水収支モデルによる予測等が可能になる。このように流動性の大きい表土層水分は、排水によって水分貯留空間を確保しつつ、繰り返し降雨貯留を可能にし、水資源の有効利用に役立つほか、斜面下流端から地下水帯への直接補給源となり、効果的な地下水利用を可能にする。ため池を利用してこのような地下水と地表水を連動させた水資源の循環利用と洪水と渇水の緊急時への対応についてモデル化し、資源の循環利用が効率的に行えることを示した。 伐採木等森林資源の処理・循環利用面では、各種利用の状況について調査を行うと共に、現地での分解処理の可能性について検討している。現地斜面ではF層の厚さとともに糸状菌の活性度が大きくなる傾向が見られたため、室内実験によって好気性菌の活性化する条件について予備的な実験を行い、土壌中のセルロース分解菌の活動と温度条件、水分条件との関係について検討しているが、現在のところ明瞭な結果は得られていない。現地での斜面表土層の微生物活動の空間分布を調べており、チップ化木材の処理とコンポスト化利用について、最終年度において水資源の循環利用とともにシステム化を図るための資料の整理を行った。
|