研究概要 |
イソプレンがモノテルペン放出種におよぼす影響として,以下のメカニズムが候補として考えられる。 1 モノテルペンの代謝を抑制し,葉内のモノテルペン含有量を低下させることで抵抗力を弱める。 2 イソプレンが表皮のガス透過性を高め(Fall,1999),モノテルペンの放出を促進することで、葉内のモノテルペン含有量を低下させ,抵抗力を弱める。 3 光合成や気孔開度を低下させ,モノテルペンの基質の生産量を低下させる。 4 モノテルペン放出種の、他の物理的、化学的特性を変化させる。 本研究の目的は,上記の点についてイソプレンの暴露がモノテルペン放出種におよぼす影響を検討することである。 植物材料として用いる、日本に植栽される自生種および外来種のイソプレン放出種を特定するため、3.0種の樹木の揮発性炭化水素(VOC)の放出を測定した。Tenaxの吸着剤を充填した濃縮管に,植物を入れたチャンバー内のガスを通気し,VOCを濃縮した。この濃縮管からVOCを熱脱着してガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)に導入し分析した。その結果,ジンチョウゲ,レモンユーカリ,ナンテン,ハギ,フジ,エニシダがイソプレンを放出していた。特に,ジンチョウゲは,高い光強度(500μmol m^<-2>s^<-1>)下で,光合成で固定した炭素の2%をイソプレンとして放出した。 暴露するイソプレン濃度は,森林内で一般的に観測される1ppbv,イソプレン放出種の葉群付近で想定される浪度に当たる10ppbvと,100ppbv,高濃度の1000ppbvとした。ガス混合装置を用いて10ppmvの標準ガスを,活性炭でイソプレンを除去した空気に混合して作製した。また,対照区の植物用に、活性炭を通したイソプレンフリーの空気を作成した。ガスクロマトグラフ(GCFID)による測定の結果,本方法で継続して必要濃度のイソプレンガスを作成可能なことを確認した。 以上の結果実験に用いる植物種の選定および実験装置の問題ない作動を確認し,実験を行える体制を整えた。次年度から暴露実験を行い,イソプレンの暴露がモノテルペン放出種におよぼす影響を検討する。
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