研究課題
家畜のゲノム研究は急速に発展し、ウシ全ゲノム配列が決定されようとしている。この段階に来て、家畜の経済的な形質に関連する全遺伝子を把握し、家畜の選抜や効率の良い生産を目指す学問が台頭してきた。それが、バイオインフォマテイックスである。このバイオインフォマテイックス研究にはマイクロアレーを利用した、網羅的・総合的な遺伝子解析が必要となる。我々は、オーストラリアのCooperative Research Center for Cattle and Beef Quality (CRCMQ)、CSIROと共同で、牛肉の肉質の改善に係わる遺伝子を発見するためのcDNAマイクロアレーの製作と、それを用いた分析に取り組んできた。実際には、神戸大学農学部附属農場にて、黒毛和種、ホルスタイン種、両者の一代雑種夫々3頭を供試し経時的にロース部分の筋肉(約1g)を生体より採取し、mRNAの分析、アミノ酸組成の分析、脂肪酸組成の分析等に取り組んだ。1)mRNAの分析ではこれらの経時的に採取したサンプルと屠殺時に採取したサンプルとを9、000種類の遺伝子を貼り付けたcDNAマイクロアレーによって分析した。マイクロアレーの作成と分析はオーストラリア側が行った。その結果、肥育開始直後の10ヶ月齢付近で、品種間で著しく異なる遺伝子が、多数発見された。そのうちの一つは、以前から見当をつけていた遺伝子、Stearoyl CoA desaturaseで、この遺伝子が、牛肉の品質の指標になる事が改めて確認された。また、その他多数の遺伝子が発見されているので、今後は個々の遺伝子一つずつについて、Real-time PCR法などによって経時的に分析に、複数の遺伝子の経時的な動態が黒毛和種の肉質の改善にどのように係わっているかを明らかにしてゆく。この研究によって、何時の時期に殿遺伝子を指標にして調べれば、屠殺時の肉質の指標となるか、肉質改善の目標として、どのような遺伝子を対象にすれば肉質の改善が図れるかが明らかになろう。
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