家畜卵透明帯に関する知見は、形態学的および生化学的分野に限られており、硬さを指標にした力学的特性については未解明な点が多い。本研究では、硬度測定用触覚センサを応用したマイクロバイオセンサによる家畜卵透明帯の硬さ測定を実行する新システムを開発し、成熟・受精・発生に伴うブタ卵透明帯の硬度変化を調べた。測定システムでは、圧電素子の先端に微細ガラス針を接続したマイクロバイオセンサを対象に接触させ、その接触状況による周波数変化量をパソコン計測プログラムを介して測定データを記録した。測定対象としては、センサの基本特性の実験として既知の濃度のゼラチン試料の測定を試みた。続いて、食肉センター由来のブタ卵巣より卵子を吸引採取し、採取直後の未成熟卵、成熟培養42時間後の体外成熟卵、媒精12間後の前核期体外受精卵および媒精7日後の胚盤胞についてその透明帯硬度を測定した。各濃度のゼラチン測定値から検量線を作成し、卵測定値をゼラチン濃度に換算した。ゼラチン試料測定結果から、本センサは柔らかいものほど周波数変化量は小さく、硬いものほど変化量が大きくなり、微量な粘弾性特性変化を検出できることが確認された。さらに、卵測定結果から、受精に伴い透明帯硬度は有意に増加し、その後の発生経過に伴い有意に低下することが明らかとなった。今後、生体内由来卵やウシ卵の透明帯硬度を測定を行う予定である。
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