家畜卵透明帯に関する知見は、形態学的および生化学的分野に限られており、硬さを指標にした力学的特性については未解明な点が多い。前年度までに、マイクロバイオセンサによる家畜卵外被の硬さ測定をリアルタイムで実行する新しいシステムの確立に成功し、ウシおよびブタ未成熟卵子の体外成熟・受精・発生過程における卵透明帯の硬度変化の詳細を明らかした。最終年度である本年度は次に掲げた2項目について実験を実施後、研究結果を取りまとめた。 1)測定システムの平準化:本測定システムの原理は対象とセンサとの接触による周波数変化量を記録し、既知ゼラチン濃度より求めた検量線より、透明帯硬度を算出するものである。従って、センサの感度が重要な要因となるが、マイクロバイオセンサはピエゾ素子の先端に微細なガラス針を装着した構造をとるため、ピエゾ素子のロットやガラス針の形状に感度が依存し、再現性ある最適なセンサ感度を見いだすために多大な時間と労力を必要とした。そこで、最先端の電気回路技術を駆使して、センサ周波数感度の自動調整ボックスを開発、その結果、最適なマイクロバイオセンサ感度の検出・調整が容易となり、測定システムの平準化に成功した。 2)過剰排卵処理した雌ウシの子宮より非外科的に回収したウシ胚盤胞と食肉センターで採取した未成熟卵子の体外成熟・体外受精・体外発生に由来するウシ胚盤胞における透明帯の硬度を比較した。その結果、体内および体外由来ウシ胚盤胞の透明帯の硬度に差は見られず、ほぼ類似の力学的特性を示すことが明らかとなった。 本研究ではマイクロバイオセンサによる家畜卵外被の硬さ測定を迅速に実行する新システムの開発に成功し、同システムを利用することで、ウシ・ブタ卵は成熟に伴い軟化し、受精において硬化、さらに、発生に伴い軟化することが力学的視点から初めて明らかとなった。
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