1.インフルエンザウイルスがマウスの脳に潜伏感染することの証明 神経病原性トリインフルエンザAウイルス24a5b株(H5N3)を137匹のBALB/cマウスに経鼻接種したところ、98匹が感染を耐過した。感染後24日から48日まで4日おきにマウスを屠殺剖検し、脳および肺における組織病変、ウイルス抗原およびウイルスゲノムの消長を検索した。その結果、1)肺においては組織病変、抗原、ゲノムが感染耐過後速やかに消失するが、脳ではそれらのすべてが遺残すること、2)インフルエンザウイルスの8本のゲノム文節のうち、7本が感染後48日になっても脳に存続していること、3)上記事象は免疫抑制によって影響を受けないこと、を証明した。この結果を論文に纏め、Veterinary Microbiologyへ投稿した。 2.潜伏感染したウイルスゲノムをもとに合の子ウイルスが誕生することの証明 神経病原性トリインフルエンザAウイルス24a5b株(H5N3)をBALB/cマウスに経鼻接種し、感染20日後に免疫抑制処置し、別の神経向性強毒インフルエンザウイルスA/Hong Kong/483/97(H5N1)を経鼻接種したが、H5N1株で脳炎を発生させることはできなかった。これは、免疫抑制処置が不十分なため、H亜型が同じウイルスを再感染させることができなかったものとおもわれる。この実験では、ウイルス接種プラス免疫抑制マウスに限って肺胞上皮細胞の腺腫様増殖を伴う間質性肺炎が発生したので、その原因を検査中である。 次に、H亜型の異なる神経向性強毒株A/WSN/33(H1N1)とH5N3株の重感染実験を行う。H1N1株には病原性の異なる株が含まれているので、プラークアッセイによって多数の株を拾い、それらの中から神経向性の強い株を選抜する実験を進めている。
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