研究概要 |
1.アプタマー標的分子の探索。 トリパノソーマ増殖抑制効果を有するアプタマー作製にあたり、どのような分子を標的にすれば最も効果的かを検討した。血漿成分であるLDLおよびトランスフェリン(TF)はトリパノソーマの必須栄養素であり、これらが欠乏するとトリパノソーマは死滅することが知られている。これらの血漿成分に対するアプタマーが虫体の増殖を阻害するか否かを検討する予備実験として、抗LDLおよび抗TF血清を作製し、In vitroでの増殖抑制効果を検討した。その結果、抗LDLおよび抗TF血清ともにトリパノソーマの増殖を阻害しないことが明らかとなった。結果は抗血清、すなわちポリクローナル抗体によるものであり、抗LDLおよび抗TFアプタマーの場合、抗原性と結合部位は無関係であるので、抗体とは異なった部位に結合する可能性がある。したがってトリパノソーマによるLDLおよびTFの取り込みがアプタマーによって抑制される可能性が完全に否定されたわけではないが、アプタマー結合部位を慎重に検討する必要があることが明らかとなった。 2.アプタマー作製用オリゴヌクレオチド(1)〜(3)を合成した。 (参考文献:Homann & Goringer, Nuc. Acids Res., 1999, 27:2006-2014) (1)GAATTCAGTCGGACAGCG(N)40GATGGACGAATATCGTCTCCC (2)GCGAAGCTTTAATACGACTCACTATAGGGAGACGATATTCGTCCATC (3)GGTCGAGAATTCAGTCGGACAGCG 下線:対応する下線部はプライマー(2)および(3)がランダムオリゴヌクレオチド(1)とハイブリダイズする領域;青色:制限酵素切断配列;赤色:T7プロモーター配列 今後、(1)を鋳型にプライマー(2)および(3)を用いてPCR反応を行ない、In vitro転写反応を行なってアプタマーを合成し、SELEX法による選択を行なう。
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