研究課題/領域番号 |
14656129
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
長沼 毅 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助教授 (70263738)
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研究分担者 |
浜崎 恒二 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 講師 (80277871)
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キーワード | ラビリンチュラ / ヤブレツボカビ / 高度不飽和脂肪酸 / β-カロテン類色素 / 従属栄養 |
研究概要 |
瀬戸内海の海水・底泥試料からラビリンチュラ類の一グループであるヤブレツボカビ類を分離・培養したところ、Thraustochytrium CHN-1というおそらく新種の菌株をはじめ、十数株を得ることができた。ヤブレツボカビ類は従来見落とされてきたが、近年、浮遊生活的な生態と有用物質生産の観点からにわかに注目されている海洋原生生物である。この新規菌株の有用成分として脂肪酸組成を調べたところ、生理活性を示す不飽和脂肪酸に特徴的なω-3脂肪酸を多く含有し、その大部分をエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が占めることが分かった。EPAやDHAは有用高度不飽和脂肪酸として知られている。また、この菌株はオレンジ色のコロニーを形成することからその色素成分を調べたところ、アスタキサンチンやカンタキサンチンなどのβ-カロテン類を多く含有し、培養条件によって特定の色素が多く生産されることが分かった。アスタキサンチンやカンタキサンチンは抗酸化剤として利用されており、本研究結果がその大量生産法の開発に寄与できることが期待される。現在、ヤブレツボカビ類の培養株を米糠などの余剰資源で従属栄養的に生育させ、ω-3脂肪酸やβ-カロテン類色素の生産をモニタしているところである。このほかにも、広島大学の練習船「豊潮丸」により今までヤブレツボカビ類が多く分布していた海域を中心に紀伊水道〜大阪湾〜播磨灘〜備後灘〜燧灘で生態調査および試料採取を行い、現在、新規培養菌株のスクリーニングと純粋培養を行っているところであり、さらに十数株の菌株を獲得できる見込みである。なお、この調査航海には国内関係者の任意団体「ラビリンチュラ研究会」からも参加者があり、関係者で協力し合って試料採取等を行った。
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