瀬戸内海の海水試料から分離・培養したThraustochytrium CHN-1というおそらく新種のヤブレツボカビ(ラビリンチュラ類)について、生理活性を示す不飽和脂肪酸を調べたところ、代表的なw-3脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が多く含まれることが分かった。また、この菌株はオレンジ〜赤色のコロニーを形成することからその色素成分を、高速液体クロマトグラフィーや円偏光二色性、核磁気共鳴法などにより調べたところ、アスタキサンチンやカンタキサンチンなどのカロチノイド系色素を多く含有し、培養条件によって特定の色素が多く生産されることが分かった。アスタキサンチンやカンタキサンチンは抗酸化剤として利用されており、本研究結果がその大量生産法の開発に寄与できることが期待される。特に産業利用が進んでいるのはアスタキサンチンなので、CHN-1株のアスタキサンチン生産の最適化を検討したところ、温度19℃でブドウ糖を添加して培養するとアスタキサンチンの生産量が増大することが分かった。
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