研究概要 |
筋肉に由来する痛みは肩こり、腰痛などだけにとどまらず神経因性疼痛などの多くの慢性疼痛にも関わっていると考えられる。その頻度は高く、また高齢化社会が進むにつれてさらにその頻度は増大すると予想される。しかし、その対処は多くの場合鍼灸、マッサージなど、コメディカル分野にまかされ、医学の中で科学的な研究・治療の対象として扱われてこなかった。したがって発生機構、神経機構についてはほとんど未知である。モデル動物の作成は筋肉痛の研究を促進する上で必須であると考える。そこで,本研究は実験動物を用いて慢性的な筋肉痛のモデルを作り、その末梢神経機構を解析することを目的とする。本年度は筋痛モデルを作成することを目標とし,長指伸筋をその支配神経の刺激(単収縮閾値の3倍の強さ,50Hzで1秒間刺激を4秒ごとに500回)により伸長性収縮させた。筋肉の疼痛閾値をRandall-Sellito法によって経皮的に毎日測定したところ,伸張性収縮負荷後2日目にもっとも低下し,その後回復した。繰り返し寒冷ストレ0ス(09:30から19:00までの間,30分ごとに22℃と4℃に交互に曝露)の負荷により,疼痛閾値の低下期間は延長した。痛み刺激が加わったことの1つの指標としてよく使われるcFosの発現を伸長性収縮後2日目に調べたところ、長指伸筋に圧迫刺激(160g,30秒間隔で60回)を加えた群の刺激側において,脊髄後角表層にあらわれるcFos陽性細胞の数が増大した。伸張性収縮のみの群,圧迫刺激のみの群ではcFos陽性細胞数に有意な変化は見られなかった。伸張性収縮後の疼痛の特徴は自発痛は少なく圧痛が顕著であることに良く一致した所見であると考えられる。これらの結果より,動物においても伸張性収縮後に疼痛(圧痛)が発生することが明らかになり、筋痛モデルとして使えると考えられる。
|