研究概要 |
筋肉に由来する痛みは肩こり、腰痛などだけにとどまらず神経因性疼痛などの多くの慢性疼痛にも関わっていると考えられる。しかし、その発生機構、神経機構についてはほとんど未知である。そこで,本研究は実験動物を用いて慢性的な筋肉痛のモデルを作り、その末梢神経機構を解析することを目的とする。本年度は、昨年度作成した筋痛モデル(伸張性収縮負荷による遅発筋痛)を用い、神経-筋摘出標本においてC線維求心神経活動を記録し、正常動物の場合と比較した。伸張性収縮(ECC)は長指伸筋に負荷した。2日後に長指伸筋に総腓骨神経をつけて取り出し、灌流槽に筋肉を、それに接続する油槽に神経を置き、油槽中においてDissection法により単一神経活動を記録した。記録したC線維受容器の受容野は、ECC群では筋腱移行部に多く分布している傾向があった。自発放電頻度には差が無かったが、機械刺激に対する反応閾値は低下し、また同じ鋸歯状機械刺激(196mN/20秒)に対する反応の大きさも増大していた。この結果は、ECC後の筋痛には自発痛がほとんどなく、圧痛(機械痛覚過敏)があることによく一致している。一方、ブラジキニンやATPのような発痛物質や熱に対して反応する受容器の割合はECC群で高かったが、その大きさには差が無かった。筋痛を起こさせるのによく使われる高張食塩水に対する反応はECC群で増大していた。高張食塩水に対する反応の機構には機械反応と共通な機構があるのかもしれないことが示唆された。
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