研究概要 |
分化方向性の制御を維持するモデルとして,造血幹細胞を選び,以下の解析を行った. (1)造血幹細胞の自己複製能維持に必要な転写因子を同定することを目指し,幹細胞の維持に重要と考えられる転写因子GATA-2の発現制御機構を解析した.GATA-2遺伝子の発現をGFPレポータータンパク質で解析できるトランスジェニックマウスを作製し,9.5日胚のpara-aortic splan chnopleura,同13.5日胚の胎児肝でのGATA-2遺伝子の発現を解析した.その結果,GATA-2遺伝子の転写制御に必須なシスエレメントを含む領域を同定することに成功した.現在,さらに結合領域を絞り込むために,同トランスジェニック法とin vivo footprint法による解析を行っている.今後は,その結合配列に対するトランス因子を同定するために,One-Hybrid法を行うことを予定しており,フローサイトメトリーにて分取したGFP陽性細胞からcDNAライブラリーを作成中である. (2)造血幹細胞の性質を有した細胞株を作成することは,幹細胞自体の稀少性の点から,今後の解析にたいへん有用である.そこで温度感受性T抗原を,胎児造血幹細胞に発現しているトランスジェニックマウスの作製に取り組み,成功した.今後,同トランスジェニックマウスから得られる血液幹細胞を用いて,血液細胞系の分化に重要な転写因子群の発現プロファイルを網羅的に解析し,分化の方向に働く転写因子群とその拮抗因子群を同定する予定である.同定後,分化に拮抗する因子群を,レトロウイルス系を用いて,分化抑制状態にある各種培養細胞や,分化抗原を発現する骨髄細胞に導入し,分化/脱分化の制御を試みる.
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