ヒト脳におけるプロゲステロン産生と作用

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14657044
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 笹野 公伸 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (50187142)
• 研究分担者: 隈部 俊宏 東北大学, 医学部附属病院, 講師 (10250747) ; 鈴木 貴 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (10261629) ; 高橋 和広 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80241628)
• キーワード: プロゲステロン / 中枢神経系 / ステロイドホルモン / 脳腫瘍 / 免疫組織化学 / neurosteroids / ステロイドホルモン受容体 / 髄膜腫髄膜腫

研究概要

neurosteroidsとは、神経系内でコレステロールから生成されるステロイドホルモンそあり、Baulieuらにより初めて示された。近年これらneurosteroidsの中ではプロゲステロン(P)が最も注目を集めており、動物実験では神経系でPが生成され、プロゲステロン受容体(PR)を介して神経に作用することが知られている。今回我々はヒト脳組織の各部位においてもPR及びコレステロールからPを合成するのに必要な酵素(StAR、P450scc、3beta-HSD)が存在していることを初めて示し、ヒト中枢神経系においてもPがneurosteroidsとして作用していることを示した。次にヒト神経細胞由来の神経原性腫瘍におけるPの影響を検討した。PRにはPR-AとBの2つのisoformが存在することが知られており、その発現レベルを比較することでPの作用動態を知ることとなる。いずれの腫瘍においてもPRの発現は広範囲に認められ、髄膜腫はPR-A、Bが同程度の発現、星状細胞腫や神経鞘腫はPR-Bが優勢に発現しているのが認められた。このようにPの作用動態はPRが発現している各腫瘍間で異なっていることが示唆された。また髄膜腫、星状細胞腫においてPR-Aの発現と細胞増殖能を示すKi-67との逆相関が認められた。よってこれらの腫瘍においてPは特にPR-Aを介して増殖を抑制させるとも推察された。

研究成果

• [文献書誌] Miki Y, Nakata T, Suzuki T, Darnel AD, Moriya T, Kaneko C, Hidaka K, Shiotsu Y, Kusaka H, Sasano H.: "Systemic distribution of steroid sulfatase and estrogen sulfotransferase in human adult and fetal tissues"Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 87. 5760-5768 (2002)
• [文献書誌] Inoue T, Akahira JI, Suzuki T, Darnel AD, Kaneko C, Takahashi K, Hatori M, Shirane R, Kumabe T, Kurokawa Y, Satomi S, Sasano H: "Progesterone Production and Actions in the Human Central Nervous System and Neurogenic Tumors"Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 87. 5325-5331 (2002)
• [文献書誌] Ito K, Suzuki T, Akahira J, Moriya T, Kaneko C, Utsunomiya H, Yaegashi N, Okamura K, Sasano H: "Expression of androgen receptor and 5alpha-reductases in the human normal endometrium and its disorders"International Journal of Gynecological Cancer. 10:99. 652-665 (2002)
• [文献書誌] Akahira J, Suzuki T, Ito K, Kaneko C, Darnel AD, Moriya T, Okamura K, Yaegashi N, Sasano H: "Differential expression of progesterone receptor isoforms a and B in the normal ovary, and in benign, borderline, and malignant ovarian tumors"Japanese Journal of cancer Research. 93. 807-815 (2002)
• [文献書誌] Sasano H, Suziki T, Irle J, Kawal K, Alba M, MoNicol AM, Takami H: "Adrenal cortical diseases : international case conference"Endocrine Pathology. 13. 141-148 (2002)
• [文献書誌] Kimura Y, Suzuki T, Kaneko C, Darnel AD, Moriya T, Suzuki S, Handa M, Ebina M, Nukiwa T, Sasano H: "Retinoid receptors in the developing human lung"Clin Sci (Lond). 103. 613-621 (2002)