研究概要 |
慢性肝疾患では、門脈域内、線維性隔壁部に線維化がみられ、この部での線維化の機序として肝小葉内で活性化した肝星細胞(筋線維芽細胞)の遊走が重要と考えられている。 本年度は、胆道系疾患である先天性肝線維症(CHF)での線維形成細胞と検討した。対照は慢性ウイルス性肝炎,アルコール性肝線維症/肝硬変の計74例。CHFは、門脈域を中心とした進行性の肝線維化および大小の肝内胆管の増殖と拡張を特徴とする。以下の成績と結論が得られた。 1.対照肝では、線維性に拡大した門脈域や隔壁に多数の筋線維芽細胞がみられ、肝実質内でも活性化星細胞が多数みられ、これらは相互に移行していた。CHFでは、肝実質内で活性化星細胞は殆どみられなかったが、拡大した門脈域には多数の筋線維芽細胞がみられた。対照肝では、活性化した肝星細胞が門脈域へ遊走し、線維形成に参画すると考えられた。CHFでは、門脈域内の小血管周囲の未熟な間葉細胞(造血系ステム細胞に由来する可能性が高い)が筋線維芽細胞に分化すると考えられた。 2.CHFでの線維化には、heparan sulfate proteoglycan(HSPG)がび漫性に沈着し、connective tissue growth factor(CTGF)を保持していた。CTGFが、血管周囲の未熟間葉細胞を刺激し、筋線維芽細胞へと分化させ、これが門脈域での持続的な線維化に関連すると考えられた。 3.今回の検討で、特殊な疾患では、造血系ステム細胞が肝線維化に関連する筋線維芽細胞へと分化することが示唆された。一般的な慢性肝疾患では、肝星細胞の活性化と遊走が重要と考えられた。
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