研究概要 |
那須病(Nasu-Hakola disease, membranous lipodystrophy)は、四肢の長管骨の骨髄をはじめ内臓諸器官の脂肪組織に独特の膜嚢胞性病変を生じ、さらには脳の白質が変性する疾患である。その病因遺伝子として現在までに、DAP12における変異とTREM2における変異が報告されている。我々は、那須病の症例で3種類のDAP12変異を発見した。1例はExon 3の1塩基欠失、別の1例は開始コドンの1塩基置換、さらにもう1例はExon 3の1塩基置換でアミノ酸の変異を伴うものであった。いずれの変異も正常のDAP12が合成されずに、那須病を発症するものと考えられた。近年那須病発症のメカニズムとしてマクロファージの分化異常が提唱されている。これらDAP12の変異とマクロファージの分化に対する影響をin vitroの系で検討するため、発現ベクターを構築した。すなわち野生型と変異を含むfull-lengthのcDNAを作成し、FLAGの下流に位置するように設定した。これをU937のようなマクロファージ分化能を有する細胞株に導入して強制発現させ、FLAGの抗体で刺激することによって、内因性ではなく、外来性のDAP12の機能を調べることが可能である。具体的には細胞株の形態学的変化や細胞膜抗原の変化(例えばCD11b, CD11c, CD68, CD16などの発現の有無)を調べることで、マクロファージへの分化能を測定する予定である。現在発現ベクターの構築が完了し、細胞株への導入実験を進めている。
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