研究概要 |
本研究の目的は,多光子レーザー顕微鏡を用いて,生細胞でミトコンドリアなどの細胞小器官を1個のレベルで制御するナノサージェリー法を開発することである。この目的を達成するため、以下の2つの実験を行った。 1.生細胞における単一ミトコンドリアの制御 生細胞における個々のミトコンドリアを可視化するため、蛍光蛋白質DsRed2にミトコンドリアターゲットシグナルを付加した遺伝子発現ベクターをHeLa細胞にトランスフェクトした。最初に、モードロックチタンサファイアレーザー(Mai-Tai,パルス幅100フェムト秒,中心波長780-850nm)を用いて、波長780nm,NDフィルター透過率10%で、個々のミトコンドリアが識別可能な画像を得た。この条件では、ミトコンドリアの蛍光強度は、ほとんど変化しないことを確認した。引き続いて、NDフィルター透過率40%として、照射するレーザーパワーを上げ、slowスキャンスピードで1回、単一のミトコンドリアのみにレーザー光を照射した。再び、NDフィルター透過率10%でミトコンドリアの蛍光像をイメージングすることにより、NDフィルター透過率40%で照射した単一のミトコンドリアの蛍光のみが特異的に消失し、周辺の他のミトコンドリアには影響を与えないことが確認された。以上の結果は、多光子レーザー顕微鏡を用いることにより,生細胞でミトコンドリア1個のレベルで制御するナノサージェリー法が可能であることを示した。 2.多光子レーザー顕微鏡を用いた生細胞における蛋白質複合体形成の可視化 Green fluorescent protein(GFP)とmonomeric red fluorescent protein(mRFP)を用いて、多光子吸収反応によって、GFPからmRFPへのfluorescent energy resonance transfer(FRET)を検出し、生細胞で蛋白質複合体形成の可視化に成功した。この結果は、複合体を形成する蛋白質について、多光子反応を用いた生細胞内制御の可能性を示す。
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