研究概要 |
リーシュマニア原虫においては,その細胞膜にエルゴステロール類似のステロールが含まれており,真菌と同様なステロール生合成系の存在が強く示唆されている。そこで本研究は,真菌のエルゴステロール生合成を阻害するトリアゾール系新規経口抗真菌剤SS750の抗リーシュマニア作用を明らかにし、これをリーシュマニア治療薬として開発することを目的として計画された。今年度は、皮膚および内臓リーシュマニア症のマウスモデルを用いて、SS750による予防・治療効果について検討を行った。まず,リーシュマニア感染に対して高感受性系統マウスであるBALB/cの尾根部皮内にアマゾン・リーシュマニアを接種し,その当日からSS750を8週間連続腹腔内あるいは経口投与し皮膚病変の大きさを測定した。その結果,腹腔内投与群では5,10,20mg/kgのいずれの群においても,経口投与群では10および20mg/kgの群で皮膚病変形成の遅延が観察された。同原虫をマウスのfootpadに接種した場合では,接種部肉芽腫の大きさは,16mg/kg8週間の経口投与群と非投与群との間に有意差は認められなかった。一方,内臓リーシュマニア症の病原体であるドノバン・リーシュマニアを同マウスの尾静脈内に接種して2週後の肝臓内原虫数を計数したところ,SS750の2週間経口投与群における原虫増殖抑制率は,5,10,20mg/kgの群でそれぞれ15,21,41%と算定された。以上の結果から,SS750は経口投与においてマウス皮膚リーシュマニア症の病変形成を一定期間遅延させる効果のあることが明らかとなった。しかし,皮膚病変の形成部位によってその効能に相違のあることが示された。また,マウス内臓リーシュマニア症に対しても一定の治療効果のあることが明らかとなった。
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