研究課題
デングウイルスには、血清型の異なる4種のウイルスが存在している。デングウイルス出血熱は、血清型の異なるデングウイルスに再感染した時、発症の確立が大幅に増加する。そこで我々が開発した、HepG2細胞を肝臓に移植したSCIDマウスデングウイルス感染システムを用いて、デングウイルス出血熱発症機構を解析した。具体的には、HepG2細胞移植SCIDマウスに、共同研究者のRothmanから分与されたデングウイルス特異的T細胞クローンを移植し、デングウイルスを接種して出血熱発症に与える影響を調査した。その結果、デングウイルス特異的T細胞を移植したSCIDマウスは、対照群が全数死亡する条件下で、20%のマウスが生残した。また一方ウイルス接種後8日までと、早期に死亡するマウスが70%に達した。出血マーカーとなる血小板数や、ショック症状を導く血漿中の尿素窒素量などの臨床マーカーを測定した結果、デングウイルス特異的T細胞を移植したSCIDマウスは、ウイルス感染3日目と早期から、血小板数の急激な低下と血漿中尿素窒素量の増加が観察された。またT細胞を移植していない対照群のマウスが脳内にデングウイルスが検出されるのは、デングウイルス接種後11日を過ぎてからであるのに比べて、デングウイルス特異的T細胞移植群は、ウイルス接種後3日で50%と高率にマウス脳内にデングウイルスが検出された。また病理学的検査により脳内で出血を示す結果が得られ、脳内で早期にウイルスが検出されたのは、脳内の出血によってデングウイルスが脳内に侵入し増殖した結果と考えられる。これらの結果から、デングウイルス特異的T細胞は、一部では防御的に働くが、他方では病気を促進させる働きをするものと考えられる。
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